2010年11月7日日曜日

私たちは“何を”売っているのか?
河村典子さんと会って考えた事


昨日、河村典子さん(写真の向かって右側の女性)と2年半ぶりにお会いし、またお話もして、ここしばらく自分の中で抱え続けている事柄を“解きほぐす糸口”を見つけた様な気がして、この一文を書いてみる気になりました。

河村さんはスイス・チューリッヒ在住のヴァイオリニストで、日本とスイスを行き来しながらコンサート活動を続けている女性です。
出会いは2年半前、古い友人・U君の湯河原の別荘で行われた河村さんの演奏会でした。その時も今も、J・S・バッハの“無伴奏ヴァイオリンソナタ・パルティータ”を演目として引っさげ、それらを様々な場所(新宿・ゴールデン街の9人も入れば一杯になる様な小さなバーから、東大寺二月堂や熊野古道・北参籠所まで)で演奏する事を通じて、自らの世界を拡げようとしている人です。

もともと、河村さんはチューリッヒに本拠地を置く“チューリッヒ歌劇場管弦楽団”の団員として活躍していたのですが、同じ楽団の友人の死を切っ掛けに退団。その後、フリーとして生きる道を選び、現在に至っています。経済的な条件の良い楽団を辞め、厳しいに決まっているフリーの道を選ぶのは何故か?私が、“自ら抱え続けている問題を解きほぐす糸口”と言ったのは、この事です。(あまりにロマンチックな思い入れは危険だと承知しているつもりですが、あえて書きますと)
つまり、河村さんの選択とは、人間として自分に残された時間を“組織”の中で託された役割を生きる事でなく、“河村典子個人”として世界と出会い自分を生き切ろうとする、そんな人間としての根源的な欲求に基づく選択である様に、私には思えてならないのです。

私自身がやっている事もまた、形こそ違え、“個人として世界と出会う場”を「あまねや工藝店」に定め、そこから私自身の人との関係を紡ぎ出しているつもりです。河村さんの場合はヴァイオリンと云う楽器で奏する音楽を通して、また私の場合は店に列べる工藝品を選び、売る行為を通して、自らを表現し他人(ひと)と、そして世界とつながっていく事が出来ている。河村さんとお話しして、ありありと実感出来たのはその事です。

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