2015年9月29日火曜日

忘れられないもの 5(中南米の土鍋)

福岡書芸院発行の冊子「たんえん」8月号掲載の記事 、「 忘れられないもの5 (中南米の土鍋) 」をお届けします。

ペルーのフライ鍋三種

今回は、中南米三国(メキシコ•ペルー•エクアドル)の、日常の暮らしに欠かせない土鍋類の仕事をご紹介します。そのうち三種類の大きさのペルーの手付き土鍋(オイルパン 径三十七cm~五十cm)と褐色釉を打ち掛けたエクアドルの平鉢(径二十五cm)は、それぞれ三十年程前の仕事で、今はどちらも手に入れる事が出来ません。メキシコの小さい土鍋三種(径十七cm~十九cm)は現在も作り続けられているものです。日常の多数(かず)の要請に応えるため、これらは全て「型」による仕事で、どれも皆しごく当たり前の姿をしています。

しいて見処を探せば、土鍋の持ち手や縁そして見込みに、ザッと掃かれた釉による景色(ペルー•オイルパン)や、釉(くすり)をたっぷり含ませた筆や刷毛で線を引いたり(メキシコ•土鍋三種)、打ち掛けたり(エクアドル•平鉢)した、その調子の面白さでしょうか。主に美術の領域に見られる、個人によって意識的に引かれた線や造られた形に比べ、これらの仕事のうちに見られる線や形の方が、とらわれる事のない遥かに自由で美しいものになっていると見るのは私だけでしょうか。

エクアドル平鉢
メキシコ土鍋

2015年9月24日木曜日

「十八番の会 • 八女展」後半へ


昨23日で、福島八幡の秋祭りも終わり。灯籠人形の最終公演は、雨の中たくさんの見物人を集めて、例年通り賑やかに行われました。
私共も10分前に(何しろお隣なので)会場を出て、八幡様の舞台に向かい大勢の人に交じって、今年の演目「薩摩隼人国若丸安芸宮島詣」を鑑賞。祭りの最後の演し物を、皆さんと楽しみました。



静かな秋の気配を楽しみに、八女の町へお出掛け下さい。
なお、福岡展は9月27日の1週間後、10月3日(土)から12日(月)まで、あまねや工藝店2階会場で行われます。

2015年9月22日火曜日

「第4回十八番の会」が始まりました

19日に「第4回十八番の会」が始まりました。前日18日の夕方まで一部の荷物が届かず、やきもきしましたが、関内潔さんや高橋康太郎さんの助けを得て、何とか「もの並べ」も終了。途中、夕飯を食べたりビールを飲んだり(ここがこの会場の良い処です)した所為もあり、終わりは午前4時でクタクタの滑り出しでした。

会場の高橋宏家
会場2階から福島八幡境内を臨む
会場横の福島八幡参道
会場1階のnatsumichiの染型布
ここで珈琲を
2階に上る階段吹き抜けにも型染布
2階会場の様子
2階の床の間の様子
もう一枚の広幅型染布
2階板の間の様子、壁は柚木プリント
同じく板の間、ふすまには芹沢年賀状や蔵書票
和紙の型染めカレンダーもあります
会場1階の様子、押入れ下にはnatsumichiバッグ

natsumichiの小さな作品類 
芹沢の蔵書票作品や年賀状
岡田満講演会の様子

2015年9月14日月曜日

あった事会った人 11

ヨーガンレールのブースに並ぶ漂着ゴミ製の照明

9月19日から始まる八女での「第四回 十八番の会」を二週間程先に控えた9月6日の夜、夜行高速バスで東京に向かいました。
約2年振りの事です。あれこれの事情で、なかなか出発日を決められず、電話でバス切符の有無を問い合わせた時は、残席わずか一席(窓側7C)。幸運でした。午後7時10分、天神バスセンターを出発。
最新型のバスで個室4席付きです。他の座席も前の仕様に比べると、大き目でゆったりしています。

上と同じくペットボトルの蓋製の照明

失望は翌朝から始まりました。これまで東京行きの夜行高速バスは、名古屋から中央自動車道に入り、翌朝最初の洗面休憩が諏訪湖SAで、そこから終点までの3時間(正確には最初の1時間程)の車窓風景が素晴らしいのです。南アルプスの麓を縫い、甲府盆地を抜けて富士山を裏側から見ながら、八王子から新宿駅西口まで。新しいルートは名古屋から新東名自動車道に入り、最初の休憩が静岡SAです。それからの3時間は特に素晴らしい風景もなく、皆さんにはお勧め出来ません。

もっとも雨模様の天気でしたから、晴れていれば富士山が見えるのかもしれません。7日朝9時30分頃、30分遅れで新宿駅西口到着。慌ただしく出掛けて来た所為で、お土産も買って来ませんでしたから吉祥寺の「小ざさ」の最中を買う事にして雨の吉祥寺へ。
買物の後、旧友のF君と待ち合わせ、高知県南国市で竹細工の仕事をしている山崎大造(やまさきだいぞう 昨年度日本民藝館賞受賞者)さんの個展を見るために、初めての店 O へ。ここの店主Kさんは、昨年福岡での催事の折に当店を訪問してくれたため、答礼訪問も兼ねての事です。会場に並ぶ様々な籠のうち、直径が2m近くありそうな生け簀籠にヒントを得て作られたという巨大な籠が印象的でした。

島の海岸に流れ着いた漂着ゴミの写真(すら美しい)

F君とお茶の水や新宿の中古オーディーオやCD、音楽関係書籍を置いている店をハシゴして、本2冊を購入。その後、Aさんと待ち合わせている京王線笹塚駅に向かい、Yさんのお見舞いの為「つるとかめ」へ。2年振りでお会いするYさんは一回り小さくなっておられたけれどお元気で、一緒に童謡を歌い愉しい時間を過ごしました。
翌8日は朝からの雨を押し、モトちゃんと一緒に駒場の日本民藝館へ。特別展の「芹沢銈介生誕120年記念特別展」を見た後、横浜の中華街へ。昼食後、横浜のOさんを訪ねて、京都「せんきた工藝店」の催事の為のモノ選び。入荷したばかりのメキシコの木の椅子の他、まずまずの選品を終えて帰宅。

ぶれて解像度が悪いので読めますか
翌9日は朝から雨模様の中、頑張って地下鉄の大江戸線で木場にある東京都現代美術館へ。「おとなもこどもも考える ここはだれの場所」展のヨーガンレールのブースで、彼が住んでいた沖縄の島の海岸に漂着したプラスチックゴミを使って作った、照明器具や履き古した(これも漂着ゴミの)ゴムゾーリを使ったインスタレーション、を見るのが目的です。同美術館は5•6年前(もっと前かもしれません)メキシコ人の建築家、ルイス • バラガンの展覧会を見に行って以来2度目です。
以前、facebookに上がっていた、展示物の「会田家」檄文が撤去されるかもしれない、と話題になったその檄文も無事で、経緯は知りませんが、美術館側との折衝ではどうやら”美術家 会田誠”の勝利に終わった様です。ヨーガンレールの展示物は、元は漂着ゴミであるにも関わらず、美しいものでした。写真を見て頂きましょうか。

これらのゴミが照明器具に
よく見るとその正体がわかる
漂着ゴムゾーリの展示


9日昼過ぎの新幹線で大阪へ。梅田阪急で開催中の「柴田雅章築窯40年記念展」を見る為とその後のレセプションに参加するのが目的です。7日、留守宅に柴田さんから連絡があり、その会場でゲストの一人としてお祝いの挨拶をしなければならなくなったのです。翌日から原稿を書き始め、推敲して最終原稿が出来上がったのが新大阪駅到着直前でした。会場で聞くと私の持ち時間は3分だそうで、書き上げた原稿がどの位の時間に納まるものやら、見当もつきません。参加者(120人)皆が食事中の挨拶なので、少し気が楽でした。メモに目を落としながら挨拶し終えると、約2分程だった様で一安心。会場には丹波の平山元康君や子供達も来ていて、3年振りの再会を喜びました。

会場の様子
平山家の子ども達と
パーティー会場

翌朝、駅近くのホテルまでせんきた工藝店のK君夫妻に迎えに来てもらい、鳥取岩美の山本教行さんの窯に向かいました。参考館に並んでいる少し前の時代の山本作品を見るのが目的です。
午後3時過ぎにクラフト館岩井窯到着。早速、並んでいる作品(三十代の頃のものから)を見せて頂きました。他のものと合わせて、一人の作り手の45年に渡る作品を見るにつけ、多様に見えるそれらの造形も、ただ一人の人間の“憧れ”が、時間の流れの中で様々に姿を変え形を変えて其処に有るだけで、本質的なものは何も変わらない、そう私には見えました。個人作家とは、自分に与えられた只一つの歌を生涯歌い続けられる人、そう思いました。

クラフト館岩井窯、前面が増築されて作品展示室に
参考館内部
長辺が尺五寸位の特大長鉢
上の大長鉢より心持ち小さめ
参考館内部1階

2015年9月6日日曜日

「第四回 十八番の会」八女展の御案内

岡田満•求龍堂在職時代の仕事の「芹沢銈介作品集」
その他、芹沢作の珍しい蔵書票や手彩色の年賀状や葉書
そして、佐藤春夫「極楽から来た」の挿絵原画の型染作品
壁に掛かる「柚木プリント」ロマネスクシリーズ
そして、natsumichi大木夏子や北澤道子の型染作品の他
あまねや工藝店の定番作品「岩井窯•山本教行作品」や
メキシコの皮張り椅子(大)やスツールなど
9月19日から27日までの日程で、八女•高橋宏家を会場に「第四回 十八番の会 芹沢銈介からnatsumichiまで」八女展を行います。
例年通り、21日から23日の三日間は「福島八幡」の秋祭りで灯籠人形の公演も行われます。今回の参加者は、大木夏子•北澤道子の二人の型染めユニットnatsumichiと、昨年に引き続き用美社の岡田満(ただし、今回は編集者としての同氏の紹介です)の三人です。
会期中、19日の午後二時から、スライドを使い「芹沢銈介の装幀装画」と題した岡田氏の講演会を、さらに20日の午後6時30分からは、会場二階で「民族文化映像研究所」の記録映画「豊松歳時記」上映会も行われます。どうぞ、お出掛け下さい。

“型染めのある暮らし - 芹沢銈介からnatsumichiまで -“と題して、四回目の”十八番の会”を開催する事になりました。型絵染で人間国宝に認定された染色家の芹沢銈介が、戦後、東京の女子美術大学の工藝科で教鞭をとった事は広く知られています。その後、直弟子の柚木沙弥郎や柚木の教え子の大澤美樹子が、同大学において多くの学生を育てています。その意味で、芹沢銈介は工藝に於ける染色の世界の大きな”泉源”の一つとも申せましょう。natsumichiの大木夏子と北澤道子は大澤美樹子の教え子で、芹沢にとっては曾孫弟子にあたります。

一方、用美社の岡田満は”求龍堂”在職時代に「芹沢銈介作品集」の担当編集者になった事が、”民藝の世界”の様々な作り手や著名士と縁を結ぶ切っ掛けになり、それが後に”用美社”を起こしてから「柚木沙弥郎作品集」や「少年民藝館」等、たくさんの美しい作品集に結実します。今年は芹沢銈介生誕120年の記念の年で、9月1日から11月23日まで駒場の日本民藝館を会場に特別展も行われます。

今展でも、natsumichiの各種の型染作品を始めとして、編集者•岡田満の仕事としての芹沢銈介作品集(求龍堂)、更には武田泰淳著「十三妹(しいさんめい)」や佐藤春夫著「極楽から来た」の挿絵原画の型絵染作品や珍しい蔵書票、また手彩色による年賀状や葉書、さらに芹沢の暖簾作品をシルクスクリーンで刷った「芹沢プリント」や「柚木プリント」のロマネスクシリーズ等、諸作を展示販売いたします。会場にはあまねや工藝店の定番作品も同時に並べ、“型染めのある愉しい暮らし”を皆様に見て頂くつもりです。どうぞお出掛け下さい。

● 19日午後2時からスライドを使った岡田満氏のお話「芹沢銈介の装幀装画について」(有料)● 20日と21日は昨年同様”coffee county”の森崇顕さんによる珈琲販売(有料)。22、23日は”珈琲 花坂”の花坂和英さんの珈琲販売予定(有料)● 20日午後6時30分から会場2階で民映研の「豊松歳時記」上映(連絡先 朝日屋酒店 tel 0943-23-0924)
●秋祭りは21日から23日まで。会期中、天神バスセンターから会場直行バスあり。往復 二千円 (予約のみ)三便。
問い合わせ 九州高速バス予約センター(tel 0120-489-939 )

[八女会場]高橋宏 家    八女市本町103 (福島八幡隣)  
  ’15年9月19日(土) ~ 27日(日) 午前10時~午後6時 (会期中無休)

[福岡会場]あまねや工藝店  福岡市中央区平尾1-12-2 
  ’15年10月3日(土) ~12日(月)  午前11時~午後7時 (会期中無休)