福岡書芸院発行の冊子「たんえん」8月号掲載の記事 、「 忘れられないもの5 (中南米の土鍋) 」をお届けします。
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ペルーのフライ鍋三種 |
今回は、中南米三国(メキシコ•ペルー•エクアドル)の、日常の暮らしに欠かせない土鍋類の仕事をご紹介します。そのうち三種類の大きさのペルーの手付き土鍋(オイルパン 径三十七cm~五十cm)と褐色釉を打ち掛けたエクアドルの平鉢(径二十五cm)は、それぞれ三十年程前の仕事で、今はどちらも手に入れる事が出来ません。メキシコの小さい土鍋三種(径十七cm~十九cm)は現在も作り続けられているものです。日常の多数(かず)の要請に応えるため、これらは全て「型」による仕事で、どれも皆しごく当たり前の姿をしています。
しいて見処を探せば、土鍋の持ち手や縁そして見込みに、ザッと掃かれた釉による景色(ペルー•オイルパン)や、釉(くすり)をたっぷり含ませた筆や刷毛で線を引いたり(メキシコ•土鍋三種)、打ち掛けたり(エクアドル•平鉢)した、その調子の面白さでしょうか。主に美術の領域に見られる、個人によって意識的に引かれた線や造られた形に比べ、これらの仕事のうちに見られる線や形の方が、とらわれる事のない遥かに自由で美しいものになっていると見るのは私だけでしょうか。
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エクアドル平鉢 |
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メキシコ土鍋 |
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