2018年8月8日水曜日

忘れられないもの41 モノを仕舞う函二種


今回、皆さんに御紹介するのは、いずれも身の廻りの品(主に衣類)を中に仕舞い納める函です。一つ目の函は、山形県の米沢で三十五年前に手に入れた(人で云えば、とっくに古希は過ぎている)鉄の引手付の小箪笥。もう一つは、二年前に取引先の倉庫で偶然見つけた、これも恐らく百年以上の歳月を経て来たであろう、六枚の板を楔で留め付けた(移動する時は楔を抜き、板の状態に出来る)アフガニスタンのスワートチェストと呼ばれる衣装函です。


小箪笥は、下の大きい引出しの前板(桧)以外は杉材を使っています。また、上板と裏板以外は柿渋に弁柄(べんがら)と墨を混ぜたもの塗っているだけ、引手や飾りに使われている金具にしても薄い並の品です。さらに、木工の技術的な精度も高いものではありませんが、板と板の留め合わせに竹釘を使ったり、三つある引出しも実用上充分な程度の納まりを現在も保っていて、全体に簡素ですが好ましい品です。  ( 高さ 63cm 幅 90cm 奥行 48cm )


もう一つの函スワートチェストは、二年前の秋、訪ねた先の取引業者の倉庫に「底板なし」の状態のまま放置されていた(?)のを見つけたものです。引き取る際、「底板(底板に出来そうなもの)を付けて送って下さい。」と云ったつもりが、言葉が足りなかったのでしょう。
しばらくして、先方が底板を「着けて(装着して)」送って来たのです。その「着け方」が半端でなく雑なもので、板の割れを止める為の鉄釘を十本近く打ち込んで繕ったりした、ひどい「直し」だったのです。唖然としましたが、ひとまず先方に「遺憾」の意を伝え、八女在住の木工家 関内潔さんに頼んで、打たれた釘すべてを抜き、跡に漆を入れて傷を目立たなくしたり、板の割れを「千切り」で止めたり、傷んだ楔を作り替えたり等々の念入りな(この函に対する充分な敬意を持ってなされた)調整修理をして貰い、半年程後に今の姿になりました。倉敷の大原美術館東洋館の入口に、このチェストの三倍はあろうかと云う立派な逸品がありますが、このチェストは私の好きな一品です。(高さ 80cm 幅 75cm 奥行 40cm)