2016年12月5日月曜日

忘れられないもの 20 インドの染織品四種

子供服二種
婦人スカート生地
ナガ族 勇者のマント
東京•渋谷に程近い目黒区自由が丘にあって、印度やアジア諸国の染織品を中心に七千点以上に及ぶコレクションを所蔵する「岩立フォークテキスタイルミュージアム」の館長•岩立廣子(いわたてひろこ)さんに初めてお会いしたのは、かれこれ三十五•六年前の事です。岩立さんは、四十数年に及ぶ印度に関わる御自身の活動の一環として、これまでに様々な展覧会を企画実現して来られました。中でも駒場の日本民藝館を会場にして、一九八五年夏「ヴィレッジアート展 西印度砂漠地帯の暮らしと美 」と名付け催された展覧会は、若い世代の関心をも集めて、日本民藝館の企画展としては記録に残る程の入場者数となり、以降、日本民藝館入館者に若い人達が増える切っ掛けになったと聞いています。五年前、その一端を伺わせるコレクションの一部が「福岡アジア美術館」に並んだ事がありますから、ご覧になった方があるかも知れません。

当店でも一度だけですが、三十五年程前に貴重なコレクションを拝借して、展覧会と講演会を企画した事があります。その折に強く印象に残っているのは、コレクションの素晴らしさもさる事ながら、御自身で撮られた写真(スライド写真)が実に良い写真であった事と、現地で御自身が経験された話の面白さでした。四十年、八十回に及ぶ渡印で撮られた写真が三万点にも及ぶそうで、現在はそれをデジタル化する作業が進行中なのだそうです。さて、今回御紹介する染織品四点は、いずれも岩立さんが印度染織品の店「バザール岩立(後のカディ岩立)」をやっておられた二•三十年前に頒けて頂いたものです。どれも色鮮やかで美しいものです。先の二点は印度北西部ラジャスタンかグジャラートいずれかの州の子供服、次も同じ地域の婦人のスカート生地。三点共に施された刺繍が何とも素朴で可憐なもの。最後は、東部印度ナガランド州の「勇者のマント」と呼ばれる仕事で、子安貝を丸くパターン状に止め付けた美しいものです。

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