2017年10月2日月曜日

忘れられないもの30 雑用品三種


1970年4月発行の雑誌「民藝 」は 倉敷民藝館特集号 として、一誌が編まれています。同館館蔵品や館内の陳列写真の他、「倉敷民藝館問答」と題した対話形式の記事中で、外村吉之介(とのむらきちのすけ)先生は倉敷民藝館の特徴について、次の様に語っています。(館蔵品で、有名な李朝民画「四瞳猛虎の図」にふれて)「たしかに超国宝級のものだと思っております。しかし、ここの蒐集や陳列は、珍品主義ではなく、日用の雑貨主義なのです。誰でも何時でも時間や金子(きんす)をかけないでできる、美しいよい暮らしの標準を示したいと願っていますから」、また「かごだけの民藝館があってよいと思っているのです」とか、「民藝美論は本来雑貨哲学ですから、雑用品の健康さを知り、毎日の生活が美の現場だと知ると、そうならざるをえません」

そして更に、「•••多数の者の生活に、多数の物が必要です。それらが美しければ、社会が美しくなります。雑貨が背負っている、美の社会性の意味は大きいと思います」とも語って、「民藝の世界」に於ける「倉敷民藝館」の位置づけと御自身の立位置を、明確に、そして大胆に語っています。今回、この雑誌「民藝」1970年4月号に改めて目を通して感じたのは、’72年春の倉敷民藝館に於ける先生との最初の出会いの折、先生の話される言葉に私が強く惹かれたその理由の一半と、これまで携わって来た「あまねや工藝店」に於ける38年間の私の仕事そのものが、実は、この目に見えない道標(しるべ)とも言うべき外村先生の教えの示すままに行われて来たものであったと云う、今更ながらの強い感慨です。



今回、御紹介する三種の品も雑用品で、最初は現代中国の型ものの鉢(径26cm高さ12.5cm)です。たっぷりした大きさで強い調子のものなので、現代の日本の食卓に載せるのはなかなか難儀(これに見合う食器を用意すると云う意味で)かもしれません。


次はうってかわって、愛らしい朱漆の蓋もの(径7cm高さ4,5cm)です。白粉入れにでも使ったものでしょうか。


最後は、甕器(おんぎ)の塩辛壷(径27cm高さ38cm)です。若干生っぽい釉肌をしていますが、指描きの模様が冴えた一品です。

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