今展のD • クイン全作品23点 |
知り合って1年半程になる水町純さんと、あまねや工藝店40周年の今年、何か一緒に出来る事がないかを考えていた時に、昨年秋に浦和まで出掛けて見たデヴィッド•クインの平面の仕事が頭に浮かびました。最初は、30年近く前に催した「大澤美樹子個展」の様に、私の仕事の領域である工藝関係の催事の時にでも、と思っていたのです。しかし、水町さんのホームページ(junmizumachi.com)で聴く限り、SOUND DESIGNで「作られた音」と工藝領域の表現が、どうしても上手く重ならないのです。
デヴィッド•クインの作品は、平面の表現として見ると言葉数の少ない静かな表現です。いきおい、それらの作品を展示する空間もまた、空間自体の情報量が少ない(つまり、その空間にあまり色や豊かな素材感を持つものが使われていない)、大半の美術館や美術画廊の様な白い空間( White Cube )の方が 、作品自体が語り掛けてくる「声」を聴き取り易くなるのだと云う事に、ようやく思い至りました。
それに引き比べ、当店の空間は、一階から二階に至る黒い板の吹抜壁、正面の明るい茶の六枚の背の高い扉、そして茶のココナツカーペットの床と、あまりにも豊か過ぎる素材で構成され満たされた空間です。これまで、すこぶる居心地の良い空間と思いこそすれ、その空間が作品の足を引っ張りかねないと感じたのは初めてでした。
まず、この空間の中に仮の白い板壁を下げる事を考えました。
そこで、考えた事をスケッチし、仮壁の大きさ、全体の構成、そしてどの様に既存の空間にそれを入れ込み、構造はどうするか?
と、まるで限られた敷地に一軒の住宅をどう配置し上手く収めるかに似て、小さな住宅の設計作業の様でもありました。
初めに段ボールシートを買い、仮壁の大きさに裁断。それを下げる予定の処にピンで留め付けます。吹き抜け壁に3枚、正面に3枚、二階踊り場に1枚。後は一階のノゾキに大きめのもの1枚。そして、作品の代わりに白い紙を作品大の大きさに切ったものをこちらに一枚、あちらに三枚と構成を考えながら並べます。仮壁も最初は白く塗るつもりでいましたが、塗ってしまうと色の調子が強すぎて、既存の空間にどうしても上手く納まらないのです。白っぽいベニヤ板を探し、それをそのまま無塗装で下げる事にしました。水町さんとの3回の音出しテストを含め仮壁のほか既存壁や板壁に、あわせて23点のD • クイン作品が並んだのは、ぎりぎり初日前日の金曜日でした。
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