私達が日々の暮らしで使う道具類は、時代の移り行きと共に使われなくなるものがあるかと思えば、新しく産まれ登場するものもあり様々です。これら暮らしの道具類に共通するのは、そこにいつもあって、私達の暮らしを支え助けるものであるという事です。
倉敷民藝館初代館長外村吉之介(とのむらきちのすけ)は、自著「少年民藝館」(1984年 用美社刊)の「まえがき」の中で、「見せかけの、形も色も悪い道具類を毎日使っていると、心まで粗末な人になってしまいます。(中略)形も色も良く、たよりになる健康な美しい道具をえらびたいものです。」と述べ、私達の身近にあって、日々の暮らしに交わる道具をよく選ぶ事の大切さを説いています。これからの数回、そんな日常の健やかな道具類を紹介します。
最初は水など液体を入れる道具、水差しです。左の背が高い素焼きのもの(径9cm 高38cm)はトルコ北部の黒海沿岸に近い地方で使われて来たもので、その長く激しい労働を物語る様に、底部には擦れて出来た穴が開いています。腰回りの逞しさに比べ注ぎ口は小さく、全体の形状は中国唐代の鶏冠壺を思わせるものがあります。隣はルーマニアの仕事(径10cm 高15cm)で形に古格があり、ヨーロッパ中世のジョッキや水差しを見る様です。表には特色のある化粧が施され、廻しかけられた緑釉が効果的で美しく、手に取ると驚くほど軽いものです。
次のビルマの朱の盆上に並んでいるのは、オランダ、日本、韓国、インド、イギリスなどのピューター(錫と鉛の合金)や真鍮、そして銅に錫メッキしたものや銀器まで、様々な地域時代の金属製のスプーン類(10cm~21cm)。
フィリピンの黒い板の上に並ぶ品は木製のスプーン類(11cm~30cm)で、左端の朱で先が尖ったものは台湾、その下に並ぶのがインドネシアのココ椰子の殻で作ったもの、隣りの二本と右端のものはフィリピン、その隣の白木に焼いた模様を付けた三本がアフリカです。
最後は湯を沸かす道具で、左端は朝鮮族(?)の鉄瓶、真ん中はネパールの銅の薬缶、右端はインドの真鍮の薬缶、いずれも(径 高さ共20cm前後)店や自宅で使っているものです。
0 件のコメント:
コメントを投稿