今回、皆さんに御紹介する「軟陶の焼物」とは、比較的低火度で焼かれた焼物の総称で、日本の楽焼や中国の唐三彩がそれにあたります。以前、この欄で御紹介した「アフガンの古鉢」もそうです。ただ現在、普通の家庭の食器棚の中は、硬質陶器や磁器と呼ばれる硬めの壊れにくい食器類がほとんどで、「軟陶」と呼べるものがあるとしても、日本ですら「土鍋」くらいでしょう。しかし、世界にはまだまだ「軟陶の焼物」が沢山あるのです。試しに、当店在庫の「軟陶」生産国を順不同で挙げてみると、イラン•インド•アフガニスタン•インドネシア•ビルマ•トルコ•ペルー•メキシコ•エクアドル•スペイン•ルーマニアそれに日本の12カ国。「硬質陶器や磁器」は、中国•韓国•タイ•日本の4カ国、と「軟陶」の三分の一です。
ただ、これを世界の市場で流通している数で比べると「硬質陶器や磁器」が逆転し、圧倒的多数です。何故か、と考える事もないくらい理由は明々白々です。機械工業的な技術(例えば、焼成の際のトンネル窯など)に下支えされた「硬質陶器や磁器」の大量生産と低価格、これにつきます。一方、「軟陶」生産国の数が多いのは、材料の陶土と技術に長けた陶工さえいれば、比較的簡単な設備で地域の実情に応じた制作が出来るからでしょう。
さて、最初に御紹介するのは、スペインの四耳壺(口径 38cm 高さ 27cm)です。堂々とした体に立派な耳がついています。30年以上前に手に入れました。
次は、インドネシアの黒陶の鉢(推定 径 26cm 高さ 7cm)です。一見すると、質感が石を思わせる品で、中には「擂り目」の様な筋が横に入っています。古窯系の擂鉢を彷彿させる魅力的なものです。
最後は、トルコの小壷(大 口径13cm 高さ 22cm 小 口径 8cm 高さ 14cm 推定)です。仕事を始めて、4•5点しか類品を見た事がありません。数が少ないのは、実用陶でありながら軟陶なので、大半は壊れて残らなかったのかもしれません。古い時代の信楽(しがらき)の種壷かパナリ焼を思わせる様な仕事です。今の日本で造型される同種の写しに比べて、邪気が感じられないのが不思議です。(品物のサイズで推定とあるのは、現在手元にない為です、あしからず)
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