「剣道と現代美術の幸せな関係」と、タイトルに書いても皆さんには何の事だかお分かりにならないと思います。それも当然で、松形さんの尺八寸の大鉢を見て、今し方思いついたタイトルなのですから。
どう云う事かと言えば、松形さんが学生時代に美術部に所属し、絵筆を執って絵画を描いていた事はDMにも書きました。実は美術の他に、この御仁(ひと)は剣道を長いこと続けて来た人で、中学校の教師時代、剣道部の顧問を引き受けさせられて、休みもなく大変だったとの話は聞かされていたのです。今回の大鉢は、松形さんの人生の根にある美術と剣道を「産みの親」として生まれたものであるとの確信を抱くにいたり、それを皆さんにお話ししたくなって、この面妖なタイトルをでっち上げたと云う訳です。
とは言っても実のところ話は簡単で、この点打ちの仕事を見ていると、剣道の試合で相手を前に竹刀を構え、一瞬の隙を捉えて面や小手を打つ或いは胴を払う、そんな気合いが、ありありと、私にはこの尺八寸の点打大鉢から見えて来るからなのです。
現代美術の世界でこの仕事の印象に近いものを探すと、アクションペインティングで名高い白髪一雄(しらがかずお)やアメリカのジャクソン・ポロック、そして工藝の世界では武内晴二郎の一連のスリップウェアや棟方志功の書の仕事等が眼に浮かんで来ます。褒めすぎだ、と貴方は言うに違いないけれど、この仕事は本当に上出来です、松形さん。