2018年12月3日月曜日

忘れられないもの45 健やかな道具 3

フィリピンの肩掛け籠三種と食籠
フィリピンの平籠

「健やかな道具」3回目は、竹や籐あるいは木を使って造形された様々な道具類をご紹介します。まず最初は、籐や竹を素材に作られたフィリピンの肩掛け籠三種(縦18cm~32cm 横22cm~32cm 巾7cm~12cm)に、竹と籐で造形された平たい食籠(じきろう)(縦22cm 横23cm 高11cm)、そして大きく深めの籐の平籠(径55cm 高24cm)です。
実用的な編組品として見るこれら籠類は、用途の上からもまた造形的にも、瑕疵(かし)のない実(まこと)に申し分のない仕事に見えます。
同じ編組品でも、日本の伝統工芸系の仕事に接して時に感じる、ある「息苦しさ」の様なものは微塵もなく、用に徹した仕事のみが持つ風通しの良い仕事になっています。

パミレケ族の筬とトルコの機道具

次は、アフリカ•カメルーンのパミレケ族が、細巾の木綿布を織る時に使う水平機(すいへいばた)で使う筬(おさ)(縦17,5cm 横17cm)です。丸く
造形された方を下にして上から吊るし、それ自体の重さを生かして緯糸(よこいと)を打ち込む時に使います。その隣りは、トルコで作られる毛織りの敷物キリムの、同じく緯糸を打ち込む道具(縦32cm 横11cm 
厚1cm~3cm)です。持ち手から刃先まで継ぎ手を使わない一木(いちぼく)の作りです。いずれも物を産み出す道具として用途に仕える品でありながら、いや、むしろ仕える品であるからこそ、特にパミレケの筬は、アフリカならではの豊かで美しい造形になっています。

木版更紗布版木三種

その次は、インドの木版更紗布を制作する時に使われる版木三種(平均 縦9,5cm 横12,5cm)です。一木で作られたものもあれば、本体上部に溝を彫りそこに持ち手を差し込んで留め付けたものなど、様々な作りのものがあります。堅木(かたぎ)に彫られた模様の一部が欠けると、実用の道具としては御用済みになる訳ですが、それ迄にどの位の数の更紗布が染められたものでしょうか、見当もつきません。これも造形としては陰の立役者の様な物で、これ自体が造形として表舞台に立つ事はない品ですが、こうして改めて見直しても充分に美しい造形です。

李朝の菓子型

最後は隣国の韓国•李朝時代の菓子型(縦 36cm 横 6cm 厚 約3cm)です。日本にも同様に桜など堅木に彫られた見事な菓子型がありますが、
それら日本の仕事と比べると、いかにも長閑(のど)やかな持ち味の造形が李朝の陶磁器類の持つ印象とも重なって、ここにもまた或る時代と文化を反映した健やかで美しい道具を見出す事が出来ます。              

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