2016年2月8日月曜日

忘れられないもの 11 編組品六種その1

福岡書芸院発行の冊子「たんえん」二月号に掲載の記事、「忘れられないもの11 編組品六種その1」をお届けします。


昨年の「たんえん」十一月号でご覧頂いた編組品六種を、これから二回にわたり個々の品のエピソードも交えて、皆さんに少し詳しくご紹介致します。初回に取り上げるのは、インドネシア「にわとり籠」、フィリピン「背負い籠」、中国「手提げ籠」、この持ち運びに関わる三つの仕事です。


まず初めはインドネシアの「にわとり籠」です。籠全体を材料のヤシの葉で大きく四つ目編に編みながら五角形に作り、上の二辺が合わさった処に、籐を交えて「持ち手」が作られています。また、その二辺は他の辺の一•五倍位の長さに作り、うち一辺に大きく開いた縦長の口が作られています。籠は大きさが数種類あり、今回ご紹介する一点は高さ56cm 巾65cm と一際大きく、この大きさから察するに、名前の由来となった“にわとり”ばかりでなく家鴨(あひる)など、大型の家禽もこれに押し込んで持ち運ぶのかもしれません。前•福岡民藝協会会長•野間吉夫氏の数回に渡るインドネシア行きで採集された品の一つ、夫人のふきさんから頂戴したものです。


次は、パシキンと呼ばれるフィリピンの「背負い籠」(高さ40cm 巾35cm)です。2006年、倉敷民藝館特別展示室で開催された「山本まつよ蒐集による フィリピンの手仕事展」に出陳された品の一つです。材料は東南アジアに広く自生する籐を使い、全体を網代編で仕上げています。籠の各処には、「背負う」という用途に対する細かい工夫が織り込まれていて、感心させられます。まず背負う場合の「負い紐」にあたる部分を見ると、肩に掛かる部分を筒状に丸く作って、肩への負担を和らげているのが目に入ります。一方、籠の底の部分は籠自体の強度の確保と地面に置いた時に転ばない様、竹を曲げ回して本体にしっかり取り付けられています。負い紐に手を入れて籠を背負ってみると、背負う事で負い紐が籠の蓋を押さえて、中のものが飛び出さない様に作られている事などは、具体的な形になったものを使いながら、折々に工夫され改良されて来た結果に違いありません。


最後にご紹介するのは四十数年前、初めて渡った香港の荒物屋で手に入れた籐の「手提げ籠」(高さ44cm 巾40cm)です。以前記事中で紹介した事のある倉敷のNさんに頼まれて渡った、初めての外国が香港だったのです。この時はこの籠の他に、棕櫚の手箒や小さめの持ち手が上に付いた大きな竹籠、黒い釉薬の掛かった型物の土鍋や土瓶、蓋物などを手に入れました。訪ねた店で暖めたコーラが出て来て驚いたり、道を尋ねたお礼にお金を渡そうとして(前もって、そうする様に言われていたのです)断られ、恥ずかしい思いをしたのもこの時の事です。外国の下町特有の匂いと喧噪。わくわくする様な数日間の香港滞在でした。最後に一つご報告。今回取り上げた三つの籠の底の大きさを試しに計ってみたところ、なんとこれがみな同じ750㎠なのです。不思議です。

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