福岡書芸院発行の冊子「たんえん」11月号掲載の連載記事、「忘れられないもの8( 編組品の健やかさ)」をお届けします。
冊子「淡遠」の4月号から連載を始めて、この11月号で8回目になります。前回分迄で、掲載する為に撮り溜めていた写真が底をつき、10月初めに慌てて「スタジオ フィデル」の藤田孝介さんの処へ掛け込み、数回分の(と思われる)写真を撮影。ただ、何をどの様にと決めないままの撮影でしたから、身近に転がっている編組品をあれこれ車に積んでスタジオに持ち込み、ひとまずそれぞれの写真と全体の集合写真を撮ってもらいました。集まっているものそれぞれに異なったエピソードはありますが、今回はこれら編組品全体の持つ「健やかさ」の依って来るところを書いてみましょうか。
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武雄の片口箕 |
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インドネシアのニワトリ籠 |
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フィリピンの背負い籠 |
ちなみに、写されている編組品は一番奥の壁際に立っているものが約20年前に佐賀•武雄の籠屋で買った片口箕。そこから反時計回りに、インドネシアのニワトリ籠。フィリピンのパシキンと呼ばれる背負い籠。手前の球状の品は、20数年前にタイ北部チェンマイのスポーツ用品店(?)で買った、東南アジアで盛んな足を使う蹴鞠の様な球技、セパタクローのボール。その隣は40数年前に香港で買った籐製の手提げ籠。中央の黒っぽく見える蓋物は、籐を編み竹を合わせた籠の上に漆を塗ったフィリピンの藍胎漆器の原型の様な蓋付き籠です。
これら作られた地域も時代も様々な品々に共通するのは、身近な所に自生する自然素材を使い、それを諸々の道具が要求する明確な用途に合わせて形作られたものである事で、各素材の持つ特性をわきまえた長い経験に裏打ちされた知識と、確かな手工の技術を用いて造形されると、自然の素材がこの様に美しい道具に生まれ変わると云うお手本の様な仕事です。
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タイ • セパタクローのボール |
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中国の手提げ籠 |
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フィリピンの蓋付き籠 |
装飾と言っても、造形された素材がそれぞれの構造に従って表に見せる異なった編み目位ですが、これ自体が構造に由来する装飾(ornament)なので、色を塗ったり何かを加えたりする装飾(decoration)と違って、過不足ありません。陶土やガラスまた金属など、可塑性の高い素材を使った仕事や染布•絵画など自由な造形を可能にする平面の領域の仕事に比べて、「自意識の罪(弊害)」から最も遠い仕事、それが本来的な編組品の仕事で、編組品の持つ「健やかさ」もそこに由来するものだと思います。さて、次回からは数回に渡って個々の編組品を取り上げ、皆さんにお伝えします。