2016年10月31日月曜日

忘れられないもの 18  甕器(オンギ)四種

福岡書芸院発行の冊子「たんえん」に連載している「忘れられないもの18 甕器(オンギ)四種」を紹介します。


十六世紀末の秀吉の朝鮮侵攻(文禄•慶長の役)の際、彼地から連れ帰られた朝鮮人陶工を祖に持つ人達によって、延々四百年以上にわたり担われて来た焼物が、鹿児島市郊外日置町美山にあります。苗代川焼(なえしろがわ)と呼び習わされて来た窯がそれで、島津家の御用窯として上手(じょうて)の「白薩摩(しろさつま)」を作る一方で、種々の茶家(ちょか)類や貼付紋を施した半胴甕など、「黒もん」と呼ばれる日常雑器を作り続けて来た事で広く知られる窯です。今回御紹介する韓国の甕器(おんぎ)四種も、当然この苗代川焼と濃い血縁関係にあり、釉(くすり)の調子や技法、そして姿形までそっくりなものが時に見られる程です。初めに御紹介するのは塩辛壷(高27cm 底径11cm 縁径23cm)と呼ばれて、韓国の代表的な発酵食品キムチを漬ける際に使う塩辛を漬け込む容器です。窯の中に多く入れて焼く為に、立てたり伏せたり重ねたりするので、胴の中程に丸く「くっ付き」の跡が見られますが、そんな事は平気なのです。


次は口付酒壷(高32cm 径25cm)です。この口縁の作り方といい、肩から突き出す注ぎ口(うば口)といい苗代川焼そっくりです。


次も酒壷(高31cm 径30cm)ですが、こちらは胴の中程に持ち手を作り、(滑り止めの工夫でしょうか)細い胴紐が貼付けられています。


最後は薬煎じ(高15cm 底径15cm 縁径11cm 手12cm)です。蓋代わりの手漉紙を上に被せ、口縁の下のくびれに紐を掛けて括り火にかけます。韓国の歴史ドラマで時々目にする光景です。

「リチャード • ゴーマン展」
オープニングパーティーへのお誘い

近作の三点
今週土曜日の11月5日夕刻から、11年ぶり2回目になる「リチャード • ゴーマン個展」を記念して、オープニングパーティーを開きます。画家ご本人に加えて、日本側窓口の浦和にある「柳沢画廊」代表の柳沢敏明さんを迎えてのパーティーです。予定参加者数は15人程ですが、未だ席に少し余裕があります。当日の料理長は、即興創作料理で当店もお世話になっている石橋シェフで、美味しい事以外、当日まで何が出てくるかわかりません。お楽しみに!
お申し込みを御待ちしております。

右下の二点は旧作です
案内状です

2016年10月25日火曜日

「第2回 リチャード • ゴーマン展」のご案内


このたび11月5日から13日までの予定で、当店では11年ぶりになるアイルランドの画家リチャード • ゴーマンの個展を開催する事になりました。最近では、4ヶ月に及ぶ大規模な個展を地元ダブリンで開催したり、服飾メーカーとして世界的に有名なブランド“エルメス”に自身のモチーフを提供し、それが同社のスカーフやシャツに採用されるなど、活動の間口が一段と広がり活発になっています。今展では、描かれた時期の異なる作品を含め、四十数点の作品を皆様に見て頂く予定です。初日の5日(土曜日)夕方から、リチャード • ゴーマンの日本側窓口である、浦和の「柳沢画廊」代表の柳沢敏明さんと画家ご本人を迎えて、オープニングパーティーを予定しています。参加費は2000円。お申し込みは、電話かメールであまねや工藝店迄。
電話 092-526-0662
 mail amaneyaアットマーク(@に置き換えて下さい)gmail.com


以下案内状の文章原稿です。

1946年アイルランド•ダブリン生まれの画家 R•ゴーマンの、福岡に於ける2回目の個展を行います。氏の個展は2005年10月以来で、実に11年ぶりになります。同氏70歳の誕生日に重ねて、ダブリンにある18世紀建造のCastletown Houseを会場に、本年5月末から9月末までの会期4ヶ月に及ぶ個展を成功させたり、エルメスに自作のモチーフを提供して、スカーフやシャツが製品化されたりと、活躍の間口と行動は、近年、より活発になっています。個展カタログ“絵を描くということ”に記されたリチャードの文章が印象に残ります。前回同様ここに再録いたします。『私の絵は(中略)年月を重ねて発展するうちに、幾度も変化を経験するでしょう。色をのせた部分同士を、また色をのせた部分とキャンバスの縁とを、緊張と均衡をもって調和させようと模索するうちに、何か驚くべき発見があるかもしれない、こうした可能性に対して、私は常にオープンである様に努めています。』今展では、氏の近作も含め四十数点を紹介します。● 初日5日の夕刻より、作者を囲んでオープニングパーティの予定。参加費2000円。お申し込みは、電話かmail:amaneyaアットマーク(@に置き換えて下さい)gmail.com であまねや工藝店迄。

皆様のご参加、お出掛けをお待ち申し上げます。

2016年10月18日火曜日

「日常展」の様子 

“もの並べ”が終わった「日常展」の様子をお知らせします。相変わらずバタバタしていて、なかなか今展の様子をお知らせ出来ませんでした。ようやく値札もつきました。お出掛けをお待ち申し上げます。

正面の様子。丹波の甕に花が入り、中央の舞台に
イギリスのスリップウェアーが登場しました
スペインの甕に入るのは
柏葉アジサイの紅葉です
西アフリカ • ドゴン族の扉
後ろは、中央アフリカ • コンゴの絞り布
正面はインドネシアの黒陶鉢
柱にかかるのは、デルフトのタイル
壁はアフガンの三彩古鉢
奥はイギリスのウィンザーチェアー
故 • 武内晴二郎の大鉢二種
中庭側の全体の様子
正面手前から奥を望む
アフリカのネックレスや
韓国の菓子型が並ぶ
階段吹き抜けの様子
一階階段の踊り場。壁に掛かるのは
ルーマニア • ガラス絵のイコン
一階のぞきの様子
のぞきの棚の中の様子
ビルマの打掛や流し釉の鉢三種
のぞきの花 • シュクシャ二種


2016年10月14日金曜日

「日常展」が始まります

今朝は早起きして、「日常展」出品の品々を5時間掛けて箱詰め。昼過ぎから開梱を始めたものの、なかなか捗りません。お茶を飲んだり珈琲を飲んだりして、何とか目処がついたのが午後10時過ぎでした。ごゆるりとお出掛け下さい(一階のぞきの展示が未だなのです)。

荷物満載そして開梱
二階正面
二階左側
二階右側
二階踊り場


2016年10月6日木曜日

「日常」展のお知らせ


冊子「日常」は、本年の5月、アクロス福岡二階の交流ギャラリーを会場にして行われた福岡書芸院主催の書展「手紙 ーあまねや工藝店と共にー 」を記念して出版された冊子です。書芸院主宰の前崎鼎之さんが書論や作品の写真で半分を、残り半分が私の担当で、冊子「たんえん」に連載中の「わすれられないもの」掲載品に短い説明文を付けたもの、で30頁ほどの小さな冊子です。それでも、自分の名前が記された冊子が世に出るのは初めてであり、光栄な事です。そして、書展の折にも、会場に並べて見て頂いた身辺の様々な工藝品を、店の二階に並べて皆様に見て頂く小展を企画いたしました。本来、仕事をする人達の参考に供すべく集めた品々に、値をつけて手放すには忍びないものがありますが、他の様々なものと一緒に、どうぞご覧下さい。

2016年10月4日火曜日

開店時間変更のお知らせ


開店以来、変えずに来た開店時間を以下の様に変更いたします。’79年に今泉の店を開けてから、変更しないままで皆様にご迷惑をかけて来た開店時間(午前11時開店、午後7時閉店)を、私どもの今の状態に見合った時間、午後1時開店、午後7時閉店、に改めさせて頂きます。多分、と言うよりは確実に、従来の開店時間を変えずに来た事で、ご迷惑をかけて来た事と存じます。この数年、とみに物事の処理能力が衰えて、そのしわ寄せが遅い開店時間(大体、12時から午後1時頃)に反映されて来ました。申し訳ない事でした。ご報告かたがた、お詫びまで。ただし、催事の期間中はその限りではなく、従来通り午前11時開店といたします。

2016年10月2日日曜日

わすれられないもの 17 藍胎漆器四種

この画像には藍胎漆器四種以外に、
日本の朱の蓋物が写っています

タイ、ビルマ、フィリピンなど、主に東南アジア一帯で広く行われている漆器の仕事に「藍胎漆器(らんたいしっき)」と呼ばれるものがあります。竹や籐など、編組品に適した材料で形を作り、その上から漆を塗って、小さなものから大きなものまで(私の身の回りに有るもので申し上げれば、径が5cm程の愛らしい色漆彩色の蓋物から、60cm以上もありそうなフィリピンの大盆まで)様々な用途、形のものを作ります。ただ、日本では身近な生活用具としての木製漆器に比べると、普段、私達が目にする機会はさほど多くはありません。今回ご紹介しようと思っている四種の「藍胎漆器」も、産地がはっきりしているのは一種類のみで、残りは正確な産地がわかりません。


まずは国籍のはっきりしている品、タイの「キンマ入れ(径9cm 高さ9cm)」です。「キンマ」とは、檳榔樹(びんろうじゅ)の実をキンマの葉にくるみ、少量の石灰と一緒に噛む、タイやビルマで広く行われて来た一種の嗜好品です。写真でお分かりの様に、深くかぶさった蓋の内側に、本体と浅目の二つ(写真では一つ)の内蓋があり、檳榔樹のの実と石灰、そしてキンマの葉をそれぞれ入れておくのに使います。


次は、何に使ったものでしょうか、少し縦に長い(径は底で6cm、大きい処で7,5cm高さ13cm)容器です。蓋を取ると、身と蓋の合わさる部分が朱に塗られていて綺麗なものです。

三つ目は、細く裂かれた竹か籐で編まれた蓋物(高さ6cm7,5cm角)です。函の強度を稼ぐ為、蓋と身の底の部分に力竹が入れてあります。

最後は白粉入れででもあるのでしょうか、やつれは目立ちますが、色漆で花模様が描かれた小さな愛らしい蓋物(径5,5cm高さ4cm)です。