編組品六種 |
今回は先月に引き続き、編組品六種紹介の2回目として残りの三種をご紹介します。初めは、20年前に佐賀県武雄の籠屋で買った片口箕(かたくちみ)(縦70㎝ 横80㎝)です。農作業には欠かせない道具として、弥生時代以来の古い歴史を持つ農具です。ゴザ目編みにした樹皮(桜)と竹を、構造材と持ち手を兼ねて大きく撓(たわ)められた木の枝に、蔓でしっかりと留め付けて作られています。他に、木の薄板同士を蔓で箕の形に留めあわせたものや、韓国のもので杞柳に蔓を合わせたもの、また綯(な)ったわら縄で造形したもの等を見た事があります。北海道のアイヌの人達が使っていた「ムイ」と呼ばれるカツラやセンノキ等柔らかい木を刳り貫いて作られたものや、東北地方で「カバ箕」と呼ばれるヤマザクラの樹皮を使ったものがある(赤坂憲雄著「東西/南北考」)、との記述も見られます。
次は25年前に出掛けた、タイ北部の古都•チェンマイのスポーツ用品店で手に入れたセパタクロー(東南アジア一帯で盛んな、足を使うバレーボールに似た球技)に使用する、籐で作られたボール(径12㎝)です。仮に、このボールの上に人が乗ってもつぶれる事はなさそうな位、見るからにしっかり作られています。後に、セパタクローがアジア大会の公式競技に採用された際、TVで試合の模様を見る機会がありましたが、その時は、ボールそのものが黄色のプラスティック素材に様変わりしていました。競技に必要な程の材料が確保出来ない為か、もしくは、素材のばらつきをなくし競技に公正を期す、とでも云った理由なのでしょうか、いずれにしても、残念な事です。
最後は、前回のパシキン同様、2006年秋の「山本まつよ蒐集によるフィリピンの手仕事展」に出陳されたフィリピンの竹と籐を合わせて造形された円筒形の蓋付籠(径30㎝高さ33㎝)です。興味深いのは、筒状になっている身の部分の底をまず六角形で編み始め、上を丸形で納めて、最後は蓋の納まりと強度を考えて、竹をしっかり留め付けてある事で、道具としての籠自体の強度を上げる為の長い経験からたどり着いた工夫なのでしょう、頭が下がります。本体と蓋、そして籠の底にも漆(湿気や匂いあるいは室内で焚く煙防止でしょうか)がまんべんなく塗り籠められています。