4月27日から5月6日まで八女の朝日屋酒店で、また5月の連休明け(11日から19日まで)からは当店で、それぞれ開催予定の「第5回ラオスH.P.E.の仕事展」の準備をいま進めているところです。案内状に、谷さんが私宛に書かれた手紙を使わせて頂く事もあり、数回に渡って、谷さんとEメールのやり取りをいたしました。その折の谷さんからのメールに、当店催事としてHPEの仕事を紹介し続けるのは何故か、と云う趣旨のお尋ねがあり、自身その答えを探すつもりで、この一文を書く気になりました。
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ある時期の覗きの様子 |
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’12年の山本教行個展 |
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’12年1月のJ・グラハム個展 |
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普段の店内 |
“あまねや工藝店”の仕事の進め方は、例えて云えば、一冊の雑誌を編集する仕事に似ています。主に、日本の各地にいる作り手の中から、自らの眼鏡
にかなった(と云うより、その仕事が尊敬出来、しかも人として私の好きな)作り手を選び、作られた物を店に並べて、使い手に紹介する。これは、雑誌が各号の
テーマを決め、書き手を選び写真撮りをして、一冊の小さな雑誌を作る、やり方とそっくりです。時々に行う個展が、いわば最新刊の一冊の雑誌と云う訳です。
私の仕事は、日常の暮らしの中で使い継がれて来た生活の道具、“工藝品”の中から様々な領域の品を、自身で選び並べる事です。品揃えについては、全体の七割程を占める焼物は、大分県の小鹿田焼や宮崎・三名窯以外九州の物は少なく、鳥取県・岩井窯や兵庫県の丹波・柴田窯や平山窯、そして宮城北部・栗駒の陣ヶ森焼、他に韓国のオンギの仕事など。染織品や編組品も、インド、中国、インドネシア、フィリピン等のアジアで作られた品の他は、アフリカのカサイクロスや大澤美樹子、名取敏雄、大木夏子などの日本人作家の型染作品が並んでいます。漆器は、福井県・河和田の中野知昭や長野県・木曽平沢の佐藤阡朗、更に岩手県・盛岡市の光原社工房の漆絵椀、そして一番おつきあいの長い秋田県・川連の佐藤幸一など。ガラスは広島県の西川孝次に村松学と、なぜか広島県に偏っています。
他に、川島玲未(人形)や関口潔(弁当箱)などの八女の作り手、森貴義(ガラクトーイ)熊井和彦(彫刻)など。他の工藝店や民藝店と比べ、大きく違っている処と云えば、外国人作家を含む版画や油絵などが、工藝品と一緒に店内に並んでいる事でしょうか。
というのも、ある時期(20年程前)、私の眼には、民藝の世界で仕事をしている人達の作る物が、どうしようもなく「後ろ向きなもの」に見えて仕様がない時期があったのです。そんな時、絵を描いている知人・大坪浩の仕事や、スペイン、アイルランド等の現存の版画家や画家、チリダやピファン、J・グラハムにR・ゴーマン、森信也等の仕事に出会って、その表現の訴求力の強さ、また自身の表現に対する真摯な向き合い方や誠実さに打たれ、彼らの個展をやる様になりました。
人手も資金も限られていますから、並んでいる品物の種類は少なく、(客観的に見れば)大きく偏った品揃えである事は間違いありません。これまで工藝品を商う事と自分の暮らし方、そして、その時々の自分の気持ちを極力裏切らない様に努めて来たつもりです。しかし、それは友人の静子・ヒューズ に言わせると、極めて日本的な(古風な)道徳観に基づくものであるのだそうで、私自身この指摘は意外でした。
と、此処まで書いて来て、果たしてこれが谷さんの問いに対する答えになっているのかどうか、わからなくなりました。ただ、谷さんのラオスでの仕事が続くかぎり、福岡と八女での展示会はお願いし続けるつもりです。どうぞ、よろしくお願いします。