2016年12月4日日曜日

忘れられないもの 19 常滑の古壷二つ

(大) 高さ 45cm 口径 24cm 肩径 40cm
(小) 高さ 26cm 口径 15cm 肩径 20cm
十五•六年前、信楽にあるMiho 美術館で開催中の“大信楽展”を見に出掛けた事があります。JR大津駅から信楽方面行きのバスに乗って約一時間。終点でバスを降りると、そこから専用の電気自動車に乗り換えて、トンネルを抜けしばらく走って展示棟にたどり着く、そんな広大な敷地に建つ美術館でした。設計は、パリのルーブル美術館に新設されたガラスのピラミッドで有名な中国系アメリカ人の I•M.ペイです。

さて、その“大信楽展”ですが、仏文学者の青柳瑞穂や写真家の入江泰吉、また文筆家の白洲正子など、いまは故人である著名人の旧蔵品に混じって、アメリカやヨーロッパの美術館から「里帰り」の展示品もあって驚きました。というのも、これら信楽の古壷に見られる灰被り等の表現(と、ひとまず言っておきます)は、西欧人の目に決してわかり易いものではない、と私は思っていたからで、それが一つや二つでなく、複数の美術館にコレクションとして受け入れられていたのが、大層意外だったのです。(しかし考えてみれば、昔からボストン美術館に岡倉天心がいた様に、今は更に多くの日本人キュレーターが世界中にいて不思議はない訳で、私が単に世間知らずだったからかも知れません)ただ、これも視点を変えて、例えば「美術の範疇」でこれらの古壷を眺めてみるとどうでしょう。極めて抽象度が高く、変化にとんだ圧倒的に美しいオブジェとして世界中で認められて然るべきでしょう。しかも、美術の世界の巨匠達が残した自覚的な作品に比べて、圧倒的に価格が安いのです。この「世界文化遺産」とでも云うべき品々の美しさを発見したのが、初期の茶人達と柳宗悦だったのです。

0 件のコメント:

コメントを投稿