2016年9月4日日曜日

わすれられないもの 16 漆絵皿四種

冊子「たんえん」7月号掲載の記事、「わすれられないもの 16 漆絵皿四種」をお届けします。(集合写真は無地の木皿が加わっています)


いつの頃からか私の手元に集まった、それぞれ異なった漆絵を表に施した木皿四種をご紹介します。小さなもので四寸(14cm)、大きなものでも六寸(20cm)程の、日常の暮らしで広く使われる寸法の品です。焼物で云えば、六寸はパン皿、四寸•五寸は取り皿の大きさです。まずお伝えしたいのは、これらの漆絵が現実の風景や物を写したり下敷きにしてはいても、それが(九州の大産地の一つ有田焼の絵皿などに見られる)写実的な表現としてではなく、(木皿の大きさに納まった、あるいは煮詰まった)工藝的な模様として表わされているところです。更に、その漆絵の「美しさ」をもたらしているものが、後の時代に出現する大量生産の為の「機械」による早くて正確な図柄の繰り返しによってではなく、「人間の手技」の反復によっていると云う「事実」です。これらの漆絵の木皿が何故美しいのか?、との問い掛けに対して、この「事実」が見事に答えていると言っていいかも知れません。


さて、最初に御紹介する仕事は、奈良県の吉野地方で作られた「吉野絵」の木皿(五寸)で、模様は木芙蓉(もくふよう)と言われています。


次は桃の模様の六寸の木皿。


次は、蓼(たで)の模様の五寸の木皿。


最後は、「判じもの」の様な絵が書かれた四寸皿で、上部の白漆で描かれた丸と斜線で山(富士山)、その丸の下と皿の一番下のそれぞれ十本程の白漆の線が(どうやら)湖面を表わし、左端に三つ並ぶのが湖面に浮かぶ帆掛舟。
また同じ三つのものを湖面の上を飛ぶ鶴と見立てれば、一番下の朱漆で描かれた線は目出たい亀の尾とも見え、さらに上の丸と対応する朝日に月とも見えます。皆さんはどうご覧になりますか。

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