2014年12月8日月曜日

エドワード•ヒューズ回顧展の事

会期は明後日9日まで
美しい釉の掛かった大鉢
2006年、国展最後の出品作
今月の3日と4日に、商用で京都と大阪を訪ねました。主な目的は、昨年12月入院中の私を見舞う為、わざわざ病院まで足を運んでくれた静子•ヒューズさんへの返礼を兼ねて、大阪の梅田阪急で約10年ぶりに行われた「エドワード•ヒューズ回顧展」を見るためです。今回は、退院後初めて夜行高速バスを利用して、行きは福岡天神から京都まで、帰りは大阪梅田から福岡天神まで、それぞれ11時間半程掛けて移動しました。4日の朝、前日泊めてもらったK君夫妻と四条河原町から阪急電車に乗り、1時間程掛かって大阪の梅田阪急へ。7階に上がり、会場の美術画廊途中の「暮らしのギャラリー」前で、開催中の「西川孝次展」の主役•西川孝次さんと丹波の陶芸家•柴田雅章さんに偶然お会いし御挨拶。お二人としばらく話した後、会場の美術画廊へ。二日目とあって会場にはお客様が大勢で、静子さんとは昼食後に会う約束をして、いったん会場を後にしました。

さて、エドワード•ヒューズが不慮の事故で急逝する1年前の2005年、今回と同じ阪急梅田の美術画廊に於ける個展案内状に付けられた文章は、夫人の静子さんの適切な日本語訳のお蔭もあって、作り手の書いたものとしては稀に見る説得力のある美しいものになっています。彼の様に、自らの考えを適切な言葉で伝える力を持った作り手を、私は日本では他に知りません。以前、その事を静子さんに話した処、 イギリスでは特に珍しい事ではないらしいのです。とすれば、やはりその原因は、私達が受けて来た「国語教育」とイギリスのそれとが大きく違っている、そこにも一つの大きな理由がありそうです。2009年12月の「あまねや通信」に「美しい言葉」と云う題名で、既にご紹介していますが、再度、皆様にエドワード•ヒューズの英語で書かれた原文と、静子さん訳の日本語とを併せてご紹介致します。

 To change like a Tree ”と題された、その全文。

In a changing and uncertain world I am more than ever inspired and guided by nature and Mingei.
Living as we do in the English Lake District I am increasingly aware of the example of the trees around us, which are the same but new each year, as they slowly change in maturity and beauty.
To thrive and be healthy a tree must renew its leaves each year. Each leaf is similar but subtly and beautifully different. Each grows and finds its natural place on the tree, giving strength and vitality to the slowly changing and maturing tree.

Just as the leaves serve the needs of the tree, my pots serve the needs of everyday life. I try to make my pots as naturally as the leaves on a tree. My cups andsaucers, plates and teapots, like the leaves, seem to be similar, but each is crafted with individual care and attention, changing subtly each year as they are renewed in the service of our everyday lives.
I hope my work will mature like the great and beautiful trees around us, evolving naturally to give joy, pleasure and comfort in this ever changing world.
     
うつりかわる不確かな世界のなかで、自然と民芸に励まされ、導かれることがますます多くなりました。英国で湖水地方に住んでいるうちに、私たちを囲む樹木が意識のなかでだんだん大きな存在になってきています。木々は毎年同じでありながら、ゆっくり成熟して美しく、年ごとに新たです。 
生い繁り、健やかであるために木は毎年新しい葉をつけなければなりません。似通っていながら、一枚一枚、かすかに、見事に違って、それぞれに所を得て芽をだし、ゆっくりと成熟する樹木の力となり、生気をあたえます。 
木の葉が木の必要にこたえるように、私のやきものには日々の暮らしが働きの場、そこで私は自然に、木の葉のように作ろうと努めます。私が作るカップ&ソーサー、皿、ティーポットなどは木の葉に似て皆同じにみえますが、一つ一つ、心して作っています。日々の暮らしに役立つことでやきものは日ごとに新しく、そうして毎年少しずつ変化しています。 
周囲の立派な、美しい木々のように、私のやきものが自然に成熟しながら、やむことなく移り変わる世界のなかでよろこびや楽しさの源となり、心あたたまるものになってくれますようにと希っています。

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