2023年12月27日水曜日

帰って来た長椅子


2021年12月に若い人二人の手伝いを得て当店に迎え入れた18世紀スペインの長椅子を、前後4本の脚を始めとして座板の補強や長椅子側面の手当など、可能な限りの修理を八女の木工家のSさんにお願いしました。修復作業が終わり、本日、Sさんと友人K君それに私の3人で何とか無事に店への搬入を終える事が出来ました。修理の過程をSさんの写真で見て頂きましょう。

ベンチを横倒しにして裏から座面を見たところ。座板の補強は、何と中国製の洗濯板でした。裏から当てた板も肝心の座板を水平に保持出来ていず、如何にも修理が付け焼き刃という感じです。


ベンチ正面に向かって左の後脚の様子。脚の材料は針葉樹で、しかも節があるものを使っているので、本来の材料の榛の木とはあまりに質感が違い過ぎ、最初にベンチを見た時はてっきり前脚には鉄のタガが使ってあるのだと思った位です。さらに、ベンチと補修材の色味を合わせる為に取り付けた後、炎で焼いた(いわゆる焼杉板を作る時の様に)為に年月の経過で痛んでいた元々の材料にもダメージを与えていたのだそうです(Sさん談)。その板がスカスカになっていた部分を取り除いた上で、栗の厚板を材料として使い、二種の着色剤で色味を整えたものです。次の1枚目の写真の左脚の上部右側が新しい材料で繕ってあるのがご覧頂けると思います。



それをこうして、こうなって〜


左の前脚のすぐ脇に角材が取り付けてあるのがお分かりでしょうか。これは溝の刻まれた前脚が押さえるべき側板が(前脚内側の)欠けのため、外れるのを防ぐ目的で後から付け足されたものです。新しい修理かと思っていましたら、留めている釘が手打ちの角釘でした、従って恐らく修理そのものも丸釘が工業化されて大量生産される前の時期、150年以上は遡るものかもしれません。


角材を外し、後ろからネジ釘を揉み込んで埋木して完成です。


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