2022年10月11日火曜日

古釜の蓋を焼物で作る

今年の夏、仏壇のある我家の座敷の大掃除をした折の事、「段ボール箱」に収まったままの状態で古茶釜が出て来ました。これは15年近く前に、当時よく通っていた西公園のAという古道具屋で分けてもらったものです。手元に来たばかりの時は、ひと月に一度はお茶の稽古をしていた事もあって何とか使ってやろうと思い、釜口に合う寸法の唐金の蓋を探したり、道具屋の知人に頼んで市(いち)で探してもらったりしたのですが、ぴったりの寸法の物は市にも出て来ないとの事で、なかば諦めてそのままにしていたのです。今回、改めてweb上で探して見たりもしましたが、寸法はともかく、形がひどいものが多いのです。画像でもお分かりの様に、何のケレン味もなく、ただ茶釜の形をした素直な形の美しいものです。(知人の鋳物師 樋口陽介さんによると風炉用の釜だ、と言う事です)鐶付(と言うらしい)の部分の磨耗具合や釜肌を見るに、おそらく三百年以上は使われて来て、釜の底の部分は何度か鋳直されているらしく見え、底と古釜本体の鉄肌の具合が明らかに大きく違います。

そこで、以前にも考えていた事ですが、焼物でこの古釜の蓋を作ってみようと思い立ちました。試しに、手元にある佐賀・白石焼の大きめの薬土瓶の蓋を載せて見た処、あつらえた様に寸法も収まりもぴったりです。誰に頼むか考えた末、仕事上でここ十年くらいのお付き合いがある宮崎・三名窯の松形恭知さんに声を掛けました。11月の大阪・梅田阪急での個展を控えてお忙しい時期でしたが、(予想通り?)嫌な顔もせず個展用の作品と一緒に作って下さいました。それが今回ご紹介する八種の陶製の蓋です。お茶の席で「陶製の蓋」などは見た事がありませんから、正式な席では使われる事がないものでしょう。しかし、この八種の色味の違う蓋と古釜の相性の良い事、驚くばかりです。「良いもんだね、川口君!」外村先生にお目に掛けたら、きっとこう仰有るに違いないと、私は秘かに思っています。



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