2011年5月16日月曜日
嬉しかった事
昨5月15日。37、8年来の知人Sさんの夫人・圭子さんと御友人のHさんが東京から、地元・けやき通りの珈琲屋(と書くと、怒られそうだけれど)の友人M君と夕方6時過ぎに、連れ立って来店。
折しも、「熊井展」二日目のお話し会後の盛況で店内はざわめき、人が沢山の時でしたが、心を鬼にして居合わせた皆さんに(熊井さん、K君ごめんなさい!)7時閉店を申し渡しました。
というのも、7時30分に近所の「洋食屋 S」に食事の予約を入れていたからなのです。実は、圭子さんのご亭主のSさん(というより、一般的には見田盛夫のペンネームで有名な料理の評論家。’82年「銀花」紙上に、今泉時代の「あまねや工藝店」とM君の店「珈琲 美々」を紹介してもらった事があります)が昨年2月に亡くなり、大分県に有るS家の菩提寺に分骨の為、九州入りしたついでに古い知人の私とM君の処を訪ねて下さった訳です。ところで、「S」には私と一緒に行く人達が、とりわけ味にうるさく(圭子さんとご一緒のHさんは料理関係業界紙の編集長、M君も味にうるさい)舌の肥えた人達だとは一言も言いませんでした。S君を変に緊張させてもまずいし、いつもの仕事振りを見てもらい、味わってもらうのが彼の為にもなると考えたのです。
さて、日曜の夜とあって店内は満席でした。あらかじめ頼んでいた「夜のコース料理」に合わせて、ワインを選びたいと云うHさんの申し出で、まずコース料理のメインディシュがどんなものであるか、なおかつそれをどのように調理してあるのかを、手伝いの女性に尋ねます。当然、彼女には答えられませんから、S君が出て来て子羊のローストに粒マスタードのソースを合わせた一皿である旨、Hさんにお知らせしていました。メニューと一緒に渡されるワインリストを見ると、見田盛夫が好きであったとHさんのおっしゃるフランス産の赤ワイン(名は失念)があります。圭子さんもM君もあまり飲めないと云うので、私がお相伴する事に決めて、そのワインを注文しました。
まずは、Sさんの思い出に皆で乾杯しました。そして、前菜の皿からスタートです。Hさん曰く、五、六種の前菜のどれもが味のメリハリが利いて美味しいとの事。とりわけ、中に添えてあった空豆の触感がお気に召したらしく、手伝いの女性を介して「その触感」の事を尋ねておいででした。驚いたのは、Hさんの感じたその触感が、実はS君が意図したものであった事です。S君にしてみれば、自分の意図したまさにその事が、他人の口を通してほぼその通りに高評価された訳ですから、嬉しかったに違いありません。その後、サラダに使っているオリーブオイルが上等である事、またスープ(新タマネギと長ネギの青味部分を使ったポタージュにまと鯛のポワレが置かれてある)に浮かせてあるバターが美味しいからと、パンの付け合わせにわざわざバター(無塩バター)を注文したり、そのバターに塩がふられて出て来るとがっかりしたりと、皿ごとに必ず彼女自身のコメントと「おいしい!」の台詞が入ります。その度毎に、私はHさんに御礼を申しました。
友人であるS君の仕事を褒めてもらって、真実嬉しかったのです。
後で、私がSの「影のオーナー」だと思った(当然冗談ですけれどね)と言って、私を嬉しがらせたりもして下さいました。
楽しく素敵な夜でした。Hさん、そして圭子さん。お訪ねいただき有難うございました。ちなみに、当夜のHさんの買物。一枚目の写真の中央より少し上の朱色の彫刻。Hさん曰く「牛のレバー」だそうです。
追記 一通りコースが終わった後のお喋りの中で、Sのメニューにクスクス(中近東あたりで食される、粟粒状の蒸したパスタに子羊や野菜を一緒に煮込んだ香辛料入りのスープを掛け回して食する料理)があると聞いたHさん。是非それを食べてみたいとおっしゃり、追加で注文しました。私達にも少し分けて下さいましたが、大半は彼女のお腹におさまりました。その後、クスクスのスープの味の話になって、私にはわからない野菜の名前が出て来て(確かセロリアーク)、それを足すかセロリの元の方を刻んで入れるだけでも、味が違って来るのだそうです。今度Sに行ったら、私もクスクスを食べてみるつもりです。
セロリアックはセロリの仲間で、肥大した根の部分を食べます。
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