2009年6月6日土曜日
嬉しい買物・困った買物
店を始めてまもなくの頃、約30年前に一度だけ生前の丸山太郎氏(長野県松本市にある「ちきりや」の初代店主であり、松本民藝館の創設者)にお会いした事が有ります。その時は多分東京の帰途、松本に廻り初対面の丸山さんに刺を通じたのだろうと思います。そのとき私は店で扱うつもりでいた印度更紗の端切れの見本帳を持ち、ぶしつけながら同氏に目を通して頂けないかお願いをしてみました。その私の必死の思いと、思いの裏にある「買ってもらえるかもしれない」という私の淡い期待など、はなからお見通しで「見るだけですよ!」と念押しをした上で、見て頂く事が出来ました。それでも念入りにご覧になった後、良い仕事だと評価して頂いて嬉しかったのを覚えています。その後、店の中を先に立って案内して下さりながら「松本は観光地だから、(大勢来る観光客に依存する私の)店に置く品はそれほど厳しい選び方をしていない。貴方(私の事です)の様な(厳しい)選択で店をやっていくのは大変だろう。」と仰ったのを、少しはぐらかされた様な思いで聞いたのを覚えています。その時松本民藝館が出来ていたのかどうか確かではありませんが、私の見た民藝館は、陳列ならびに集められた物に一切の妥協なく、それ自身が実に美しい丸山さんの表現になり得ていた事に感銘を受けました。丸山さんが亡くなられた後に見た松本民藝館は大きく様変わりして、残念ながらまるで別のものになっていました
物を商う仕事の中で、自分の思いと実際の仕事の上での落差をどう補い、先に進めて行くのか店を始めて30年経ったいまも、私には解決出来ていない問題です。写真はこの13日から始まる「旅で見つけた 工藝の愉しみ 初夏展」に出品予定の嬉しい買物の一部と、私自身の困った(to do or not to do)買物(実はどちらも私には嬉しい買物)です。
困ったって、どう困ったの?百子さんが角はやした?
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