2009年6月3日水曜日

上京 その1

「子どもの本や」展示即売会を無事終えた翌々日の26日、夜7時発東京行きの夜行高速バスで一年ぶりの東京へ。その日の午後いつものように店まで庭の花を取りに来たKさん(時々細君が庭の花を差し上げているので)。私がよほど嬉しそうな顔をしていたと見え「どうしたのか?」と御尋ねの後、上京する旨伝えると何をどう誤解されたのか「いやらしかー!」と一言。仕事に行くのです、Kさん。
さて私が上京する場合、一番多く利用するのが夜行の高速バスです。これまで様々な東京への行き方を試して来ました。ある時期は船。
一度だけでしたが、東京まで船で出掛けた事も有ります。二昼夜、36時間。これはさすがに長過ぎました。大半の積み荷が大型トラックの後部コンテナのみで、二等客室の広い広い部屋に船客はほんの数人、数える程しかいません。夜やすむ際の毛布利用料も高く、食堂のメニューも貧弱です。でも楽しい事も有ります。船底にあるお風呂まで、2・3人も乗ればいっぱいになる様な小さなエレベーターで下り、湯船につかっていると湯船の湯が船の揺れに応じて大きく揺れ、時に浴槽の外へ。豊後水道から、四国足摺岬沖、紀伊半島の沖を通って東京まで行く際、大きく揺れるポイントが数カ所あるのです。この経験の後、船は小倉から大阪あるいは神戸まで(小倉を夜に出て瀬戸内海を通り、朝早く目的地に着く約8時間の旅)にしました。着いたその日は大阪や京都で仕事をし、その日の夜また夜行のバスで東京に向かう、こんな繰り返しでした。30代のある時、三晩続けて夜行バスを利用して、福岡から岩手県の盛岡まで行った事も有ります。昼間はもちろんそれぞれの中継地でしっかり仕事をするのです。’82年頃雑誌『銀花』紙上で畏友・見田盛夫が『乏しい元手で各地を回り、出西や壺屋の焼物またインドの真鍮の煙草入れを集めて来たりする・・・』と紹介してくれたのがこの頃です。さすがに今はこんな事は出来ません。上京にバスを使う一番の理由はその経済性ですが、それだけではありません。東京行きの夜行バスは九州自動車道から山陽自動車道を通り、その後名神を抜けて、中央自動車道を経由し新宿の西口まで
約1200Kmを、およそ14時間半かけてたどり着くのです。
夜が明けると、最初の降車地が諏訪湖サービスエリアです。休憩後の3時間、諏訪湖から新宿西口までの車窓の風景が素晴らしいのです。
南アルプスの麓を縫い富士山を裏側から見ながら、甲府盆地を抜け新宿まで。とくに春など、まわりの南アルプスの山の頂きには雪が残り、盆地内は梅や桃、杏、桜等が一斉に咲きそろいまるで夢の中の風景です。この3時間の為だけに、バスを使うと云っても言い過ぎにはなりません。
今はなくなった、上野発の夜行列車を利用するときも楽しみがありました。夜遅い発車予定時刻まで、上野の文化会館でコンサートを聴き時間をつぶすのです。なんと贅沢な時間!翌朝、早い時間に目的地に到着。約束の時間に間がある時は地元の温泉や共同浴場にはいります。宮城県の鳴子など、そうやって何度通ったでしょう。それからもう一つだけ、どうしても言っておかなければならない事があります。東京での宿の事です。ここ10年程は、長男の住むアパート(6畳二間風呂無しで3万円)でしたが、最初の頃は友人の家に5日続けて泊めてもらったり(F君有難う)、山本まつよさんの事務所にご厄介になった事も有ります。そんな時の楽しみは、なんといっても銭湯です。友人のF君(前述のFとは違うF君)と行く荻窪にある飲屋の隣が銭湯で、良く利用しました。今回も久しぶりに出掛け愉快でした。近年、うちで催事をやる人に自宅に泊まってもらうのも、こんな東京での経験があるからです。ご恩返しのつもりです。東京や大阪で見た展覧会に触れる時間が無くなりました。それはまた次回。

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