2009年3月25日水曜日

若い人と話して、考えた

秋田県湯沢市の郊外に、800年ほどの歴史を持つと云う漆器の産地・川連(かわつら)があります。現在は「稲庭うどん」の名前が知られる様になって、その名を出せばおおかたの場所の見当をつけてもらえる様になりました。その川連の塗師(ぬし)Sさんとは、開店以来30年近いお付き合いで、いまは長男のFさんも塗師として活躍中です。3年程前からそのSさん親子が、毎春福岡のイベントに参加するようになり、今年は私も会場に出掛けて、Fさんの新作を含む100点程の漆器を見せてもらいながら、Fさんと色々な話をする事が出来ました。

Fさんは高校卒業後、石川県の輪島にある漆器技術の伝習所に進み、様々な技術を身につけて帰郷。地元の川連の職人では出来ない様な仕事をやりたい、また輪島の人達にも負けない様な良い仕事を続けたい。こんな強い想いを持って、日々仕事を続ける好青年です。問題はその新作で、Fさんの意欲があまりに強すぎる為か、身につけた技術を前面に出し過ぎた物が多く、かえって私達の日常の暮らしから遠いものになっている事です。川連も他の産地同様、塗師や木地師の後継者不足あるいは減少が顕著で、お父さんのSさんの話に寄れば自分の若い頃60人いた木地師がいまは4人、しかも盆の様な大物を挽ける人は70代の一人だけとか。こんな状況の中で産地の若手として伝統を担い、しかも仕事としては先細りが確実なこれからの時代の中で、いったい何を手掛りにして、人の暮らしの中で使い続けられ、かつ人の気持ちにじかに届く漆器を作り得るのか、これは一人Fさんだけの問題ではありません。あまねや工藝店として催事の約束をした手前、Fさんに私の気持ちを充分に伝え、仕事の参考になる様な物も見てもらいながら、良い催事になるよう努力したいと思います。なんとか今年中に、久しぶりの湯沢に出掛けたい、いや出掛けるつもりです。

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