2013年6月7日金曜日

荒木英雄さんの事

荒木英雄さんに初めてお目にかかったのがいつだったのか、ハッキリしません。ただ、幾つかの出会いは鮮明で、その一つが1990年の秋、熊本・小国町での「第1回 小国古楽音楽祭」の会場の一つ、家畜市場の客席(といっても普段は家畜のセリをやる場所ですから、音楽ホールの様な座り心地のいいシートが並んでいる訳ではありません)での事です。1990年秋と云えば、今泉から平尾にあまねや工藝店を移す直前で、完成前の店内(階段下あたり)を練習場に、5〜6人の仲間と「音楽祭」出演の為のリコーダー五重奏の幾つかの演目をさらいなどして臨んだ本番の演奏会。その家畜市場のステージで演奏終了後、客席に降りて荒木さんを発見、驚きました。その時も3〜4人のお仲間と御一緒で、ご挨拶したあと私どもはまた次のステージに移動したのでお話しはしませんでしたが、趣味の広い人だなぁ、と云う印象を持ちました。時々、店に来て下さる様になったのはその後の事です。

2009年の秋、長崎の“暮らしの工藝けやき”でご自分の集められたものを並べて小さな展観をやると云うご案内を頂戴し、見に行きました。アフリカの泥染布や草ビロードにカサイクロス、また鉄や青銅製の貨幣など、造形的に見応えのある物がたくさん並んだ印象の深い会でした。今回の案内状に書いた「いつか福岡で」と云う話しは、その時の事です。その3年前の2006年、長崎県立美術館で開催されたE・チリダ展の帰りに、諫早の御自宅にお邪魔して、膨大なコレクションを拝見。二枚あるスリップウェアの大皿のうち、やつれの多い一枚を拙蔵の13世紀・イギリスのエプロンピッチャーと交換して頂いたりして、以後、荒木さんとの御縁がいっそう深まりました。

今年の3月31日に“ナガサキリンネ”会場の長崎県立美術館に出掛けたのも、その会場の一室に荒木コレクションが並ぶと聞いたからなのです。その事が今回の「荒木さんの遺したもの展」につながり、皆様に荒木コレクションの一部を見て頂く事になった訳です。なお、コレクションの大半は、氏が熊本御出身である処から、熊本国際民藝館に寄贈され、8月末頃まで特別展が開催されています。私自身、今回の展観の実現に当たって、荒木英雄さんから“何か大きくて重いもの”を託された様な気がしています。明日からの八女展をどうぞ御覧下さい。

故・荒木英雄氏
カサイクロス(けやき展)
土器類(けやき展)
アフリカ貨幣(けやき展)
トルコ素焼壷
弓野・松絵大鉢

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